素材コスメを使う道具たち

素材コスメを使う道具たち

素材コスメを使うための道具に決まりはなく、自分の手のひらでさえ道具となります。 ですがお気に入りの器を使用すると、普段のスキンケアが特別な時間に感じられるから不思議なものです。

今回クレイを入れるためのキャニスター、クレイペーストを作るためのボウル、プロダクトを置くことのできるプレートをお作りいただくため、わたしたちは茨城県笠間市のKeicondoさんの工房へお邪魔させていただきました。

お伺いした日は雨。笠間市に到着すると同時に雨が止みました。
植物がキラキラ輝く自然豊かな道を進んでいきます。ちょっと変わった置物が並ぶ小道を入っていくと、工房が見えてきました。重厚感ある素敵な扉の向こうからKeiさんが出迎えてくれます。
工房の中へ足を進めると、たくさんの作品とKeiさんが集めたお気に入りの置物の数々。なんだか物語の世界のような、わくわくする空間です。

工房ではGOLEMのための作品をお作りいただきながら、Keiさんが陶芸家になったきっかけや、作品への想い、粘土の興味深いお話などを伺いました。

 

-陶芸家を目指した経緯を教えてください-

実は、はじめは陶芸家になりたくありませんでした。
親が陶芸家で難しい仕事だとわかっていたのですが、作るのは好きだったんです。小学校、中学校では技術、美術、家庭科が得意でいい成績でした。
大学卒業後、安定した暮らしを求めて就職。営業職だったのですが、やりがいで選んだわけではなかったんです。
その時は趣味がたくさんあって、車やサーフィン、スノーボードなど、休みの日は趣味に明け暮れていました。

春に入社したものの、次の春には退職。陶芸の道に進みました。それと同時に、不思議と趣味が必要ではなくなったんですよね。
仕事のストレスを発散させるための趣味だったと気づいたんです。それからというもの、いかに陶芸の時間をつくるかが重要になりました。
今では陶芸は生活の一部です。自分が表現したいこと、好きなこと、やりたいことがマッチしたものが陶芸でした。

 

 

-本当に好きなものを見つけることができたんですね。どのように陶芸の学びを深めていったんですか?-

陶芸の学校(後継者育成施設)で2年ほど陶芸を勉強しました。様々な陶芸家さんのところへ遊びに行き、横のつながりもできたのもその頃です。
その後感性を磨きたいと思い、青年海外協力隊として2年間ボリビアへ行くことに決めました。教えるというよりも、一緒にやろうよと、楽しみながら陶芸を伝えました。
現地の方々にも様々なことを教えてもらうことで感性を磨くことができましたし、生きていく中でどうコミュニケーションをとっていくかを学ぶことができました。

その後帰国し、2010年に陶芸家としてデビュー。
デビューというのは、場所を構えて、窯をもって、目標をもったときです。人生これからだ!とわくわくして、とても楽しかったのを今でも覚えています。
地元の陶器市や全国の展示会へ出展。作りたいものを作ろうというスタンスで制作していました。繋がりができてきて器を卸すようになり、料理人に出会うことが多くなったのもこの頃です。




-様々な学びを経て、陶芸作家としてデビューされたのですね。Keiさんの作品は色合いがとても特徴的だなと感じます。-

代表作の黄色の色味は、自分で釉薬を調合し編み出しました。昔から黄色が好きなんです。学校でいろんな釉薬の研究をした時に、たまたまこの色が出来上がりました。ボリビアで見た空の色も、とても綺麗な黄色で忘れられず、作品に取り入れることにしました。

作品を作るときは、僕が作る意味を大切にしています。シンプルだけど自分のスパイスを入れる。物で何かを伝えたいわけではないんです。でもなんとなくKeiっぽいよねと思ってもらえるような。そして料理を邪魔したくないので、できるだけシンプルに。
自分の器に料理がのっているのが嬉しいんです。僕の作品は料理がのってはじめて完成するのだと思っています。単体で光るよりも、合わさることで光る。”用の美”を大切にしています。

 

-今回GOLEMとのコラボレーション作品も、使うことで完成するというのがキーワードですよね。-

そうですね。GOLEMの素材コスメを使う方が、どうやったら使いやすいかを一緒に考えて出来上がった作品です。
クレイを保存するキャニスターは、クレイパックをする際、パウダーをスプーンで取り出しやすいように広口で浅めに仕上げています。
もう一つキャニスターを作ったのですが、これはスプーンなどを使用せず、アイボリークレイで洗顔をする際に片手でサッとクレイが取り出せるようにということで、どんな形だったら使いやすいかみんなで考えた結果、サプリボトルに辿り着いたんですよね。笑
色味も黄、緑、白と、それぞれのクレイに合わせたものになりました。

ボウルは重みを持たせたものにしました。道具として使うものは丈夫さが必要、必然的に厚くなるものなんです。GOLEMオリーブボウルの、ぽってり丸みを帯びてる形が手に馴染んで使いやすいというお二人の意見も取り入れ、この形に。

プレートは、洗面台やお気に入りの場所に置いた際、キャニスターやボウルなどを横並びに置けて使い易いようにということで、長方形にしました。
色つけも泥を塗ったような表現で、GOLEMの素材コスメや泥感を表現してみました。一つ一つ個性があるので、ご自分に合ったものを選んでもらいたいです。

 


-自分で選ぶ素材(原料)のこだわりなどはありますか?-

自分が表現したいもののために素材を揃えるのはもちろんですが、希少な素材だと再現性がないですね。現したいものに合わせて素材を集め、作品を作っています。
粘土は、寝かせて菌を発酵させているんですよ。その菌が粘性を増し、粘土を扱いやすくしてくれるんです。菌がいないとぼそっと扱いづらくなります。そして、焼くことで滅菌しています。 

 

-今後どんなものを作っていきたいですか?-

今は食器を作りたいという思いが強いです。食器は食のため、花器は花のため。何かのためのものですからね。

実際に料理がのることで答え合わせをしています。使用することで料理人からも要望がでてきて、そこで変化を加えたり、もっとこうしていこうとディスカッションする。自分一人では生み出すことができないものも、誰かと作品の意図を共有することで生まれるものがあります。掛け算することで、お互いが面白くなるんですよね。

今回のGOLEMとのコラボレーションもとても楽しいです。素材を器で掛け合わせることで、化粧品が完成するというのはとても面白いと思いました。

 

 

-実際に素材コスメを使ってみていかがでしたか?-

アイボリークレイを歯磨きとして使用するのが、とても気持ちよかったです。濯いだ後、舌で歯を触ったらつるつるするのが不思議でした。
歯磨き粉と変わらず磨けましたし、粘土を入れてる違和感を感じず磨けたことに驚きました。職業柄、粘土で手が乾燥して大変なのですが、同じ粘土でも乾燥しないものもあるんですね。
フェイスパックもとても気持ちがよかったです。

 

"用の美"を大切に作品作りをしているKeicondoさん。
実際に使うことで、道具として完成される。そんな作品に対しての想いが今回のコラボレーション作品で表現されていた事は、わたしたちにとってはとても嬉しいことでした。
素材コスメがKeiさんの作品と共に、生活を静かに飾ることを願っています。

 


プロフィール

Keicondo

1981年笠間市生まれ。2006年に茨城県窯業指導所(現:茨城県立笠間陶芸大学校)を卒業。その翌年ボリビア国へ陶磁器隊員として海外派遣し、笠間焼の技術を伝える。 2009年茨城県笠間市にて独立。自身の作家活動にとどまらず、異業種とのコラボレーションで陶芸の枠に収まることなく活躍をしている。
Instagram https://www.instagram.com/keicondo