Material Hunter Journal / ティーツリーウォーター

Material Hunter Journal / ティーツリーウォーター

素材を求める中で出逢った様々なストーリー。紹介したいのは、現地で見たことや行かなければ分からなかった話。 今回は、Aqua Formulaシリーズのティーツリーウォーターの製造現場へ伺った、夏の終わりの旅のこと。

 

鹿児島空港を降り立ち1時間半ほど南に車で走らせる。景色は南下するにつれ南国の雰囲気を纏い、東南アジアのどこかの国にいるかのよう。

緑の色は深く、空気は濃くなっていく。前回の訪問の時とは逆に、錦江湾を薩摩半島からストレートに園へ向かった。

すっきりと佇む開聞岳が見えてくると、少し分かりずらい開聞山麓香料園の入り口がある。まるでおとぎ話の世界の様な鬱蒼と植物が茂ったその場所は、日本にアロマやハーブの文化を持って来た第一人者である宮﨑巌が創園した日本最古のハーブ園である。現在は2代目で香料園園長である宮﨑泰と3代目の宮崎利樹で運営を行っている。

 


初めての訪問は2022年の春で、ちょうどティーツリーの花が咲いていた。白くてふわふわした綿毛のようなその愛らしい花たちは、大雨の中で雫を滴らせて私たちを出迎えてくれた。



せっかくの取材でわざわざ鹿児島まで来たというのに大雨でさぞがっかりするかと思いきや、雨に悦ぶ香料園の植物の発する生命力や、その神秘的な雰囲気と景色に私と相方は終始感動し続けていた。



最初はただの観光レベルの取材としか思われていなかった様で、園を案内してくれた利樹さんも、正直話も雑にはいはいっと言った感じであった。文字通り、根掘り葉堀り話を聞き続ける私たちは段々と打ち解け、大雨が作る親密な空気感の手伝いも相まり、次は秋の収穫に来なさいと言ってもらえた。ティーツリーの蒸留を一緒にしましょうと。


そんな思わぬ形で期間も数ヶ月しか開かずに再訪問をする機会を得た。前回は話だけで想像力が膨らみすぎてしまったが、今回は身体そのものを持って蒸留を体験する。真夏の様な秋晴れの中、収穫は始まった。私たちの他、近所に住むという2名の男女と一緒にティーツリーの枝を刈っていく。男は枝を切り、女はその枝を更に細かくまとめ易いよう大きさを合わせていく。午前中いっぱい枝を集め、80kgほどのティーツリーの葉の山を作った。

 


オーストラリアが原産のティーツリーの木。
植物というのは不思議なもので、オーストラリアから持ってきた苗を鹿児島の土壌で育てるとティーツリーが持つ成分構成は変わり、その成分そのものと呼ぶべきエッセンシャルオイルからは本国のオーストラリアのものとは香りも効果も異なったという。エッセンシャルオイルは本来、植物が気候・土壌・昆虫から自分の身を守るため、そしてフェロモンとして揮発性の油を作り出したものを呼ぶ。

油とはいえ、油脂のそれとは大きく異なるのである。それは当たり前の様で知らなかった事実で、改めて植物は土地で育つものであり、形を変えて私たちの手元に届いても、それは土地から産まれたものであるという事を再認識させられた。

 



蒸留は80年も前から直しては使い続けてきた大きなボイラーで行う。枝葉をぎゅうぎゅうに敷き詰めて、それを人が体ごと中に入って足で踏み隙間なく入れていく。



80kgのティーツリーから採れるアロマはたった1%の800mL。
1Lにも満たない。芳香蒸留水はその副産物として採れる、謂わば植物の水。直接肌に使うには刺激が強すぎるアロマの成分をやんわり優しく含み、天然の化粧水となり、私たちの手元に届く。有難い事に、私たちはその現場を垣間見て、目の前のパッケージ化された化粧水のそれが何なのかを知る。これが知りたかった。たった一度体験したこの経験で、様々な事を思考する。



ティーツリーの木は今日も当たり前の様に、私たちの事など構わずにそこに立っているだろうと想像してみる。